大正12年。
関東大震災―――
怒り狂う炎蛇のごとき火災が鎮火され、残されたのは黒く濁った空と、燃え尽きた家々だった。
主人公は地震で両親を亡くし、手元に残ったのは親が残した多額の借金。
人の心荒む東京で、幼なじみの経営する店を手伝うことによりなんとか生計を立てる日々。
幼なじみの名は武田神楽といった。
莫大な借金、返済する目処など何もないはずの主人公だった。
しかし、どこからか差出人不明の援助金が一ヶ月おきに送られてくるのである。最初はいぶかしがっていても、負債に追われる日々の主人公に選択の余地はなかった。
かくして一年間、謎の援助金は届けられ続けたのであった。
そしてそんなある日、ついにその手紙は届いた。
宛名は『九条貿易会社 代表取締役九条静華』と記載されていた。
全く知らない宛名。
だが―――ついに不明の援助金者の名前が知らされたのだ。
手紙には、『某県 某市 の山奥にある洋館《 華夏楼 》に来るように』と書かれていた。主人公は援助の理由を知るために、また、これ以上の援助を止めて貰うために、洋館へ赴くことを決意する。
幼なじみの神楽は何かを感じたのか、そこへ行く事に反対する。だが、主人公は彼女を優しくなだめ、単身洋館へと向かうのだった。
そこで待っていたのは、一代で巨万の富を築いた九条聖一の遺産。そして、それを巡る熾烈で醜悪な争いだった。
主人公の目の前に現れたのは、九条静華と名乗るその九条聖一の未亡人だった。
静華:「聖一さんの養女である『九条椿』、聖一さんの養女である、西欧人の娘『九条レナ』
……この二人のどちらかに遺産相続権が適用されるのです。
私はハッキリ申しまして、二人を邪魔な存在だと思っております。」
静華:「率直に申し上げます。そのふたりを性的にめちゃくちゃにして頂きたい。そして、精神的に壊し相続権を剥奪して頂きたいのです。」
その見返りとして、多額の礼金とふたりの美しい娘を主人公に譲るという、静華の甘く媚薬のような声音。その毒に犯されたのか、主人公は彼女の申し出を了承した。
そこに巻き込まれる使用人の月島霞。
主人公を追いかけ、屋敷に姿を現した神楽―――
人里離れた洋館。
仕掛けられた歯車は熱を持ち、静かに動き出した。
喘ぐ呼吸は息苦しく、しかし、それすら愛しい世界。
この濁った屋敷の物語に、主人公はどんな爪痕を残すのだろうか―――?